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年の瀬に本の紹介など

  

2018年もあと数時間。いつもどおりの朝の散歩、神社のお参り、直売所で買い物。おだやかな大晦日です。

今年読んで良かった本をご紹介します。まずは鴻上尚史さん著「不死身の特攻兵」です。8月15日の頃、蝉しぐれの中読み終えて、じいんと涙が出たのを覚えています。特攻兵として9回出撃して、帰還した佐々木友次さんという人のことを、はじめて知りとてもビックリしました。日本軍の理不尽な命令に、合理的に冷静に向き合って、しずかに抗った人物がいたことを知ることができました。大本営の闇も、それから70年以上経った日本社会の組織をおおうブラックという闇も、結局変わっていないなあと。軍にいた人たちそれぞれの心の動き、当時のマスメディアのこと、日本人の気質の分析まで、戦争というものを肌感覚で伝えてくださる本だと思います。このお話を(奇跡的に!)世に出してくださった鴻上さんに感謝したいです。

これも夏の暑い暑い盛りでした。東京都庭園美術館で催されていた「ブラジル先住民の椅子」展。アマゾンの森に暮らすインディオの、シャーマンが主に儀式のときに腰掛ける椅子たちが、ここ地球のうらがわの東京の一角で一挙公開されたのでした。その愛嬌たっぷりのフォルムといったら…。「道具」と「祈り」が合わさった形と柄。人間と自然とが近い、いや対等な関係はこんなにも美しいのだ、と思いました。こんなにほっとする、心地よい展覧会はなかなかないなあと足を運びました。その図録を眺めています。秋のブラジル大統領選で極右系の大統領が当選し、経済優先のためアマゾンなどの開発がますます進んでしまうかもしれないという懸念があります。私たち日本人が何気なく食べているもの・買っているものがゆくゆくはアマゾン破壊につながっているということも忘れてはいけないと思います。

さて、2018年最後の夕焼けを眺めて。
今年もたくさんの素敵なことに触れながら、歌もうたってまいりました。いつも&遠くからもお世話になっている方々に心から感謝します。本当にありがとうございます。
みなさまどうぞよいお年をお迎えください。

2018-12-31 | Posted in ... Blog ...Comments Closed 

 

色も心も値千金

あっという間に12月。朝の散歩をしに行く公園のもみじが鮮やかに染まっていました。耳をすますと、渡り鳥の声がたくさん聞こえてきます。母の認知症のことで笑い泣きの日々(^^)、家族皆元気にやっています。「認知症」という言葉も正直あまり使いたくありませんね…(私の祖父もアルツハイマーで、昔は「痴呆症」と言ったものです。これもちょっとヒドい言い方ですが)病気というよりは、結局はその人の人生を重ねる中での自然現象なのでしょう。医療面と福祉面の両方でどのように対処してくれるのかをここ数年見てきましたが、やはり福祉に携わる方々には本当に頭の下がる思いです。片や5分で診察して薬を出す、片や根気よく付き合って直接気持ちを交わしてくれるのですから。政府もアメリカからステルス戦闘機100機を買うくらいだったら、こういう地味に地道に社会を支えている人たちにもっと手厚くして欲しいと切々と思います。手を握ったり、肩を抱いたりして「大丈夫だよ」と伝えてあげる、人の心の尊さよ…。

今週は、金曜日に三軒茶屋のレストラン・アンシェーヌ藍でランチコンサートがあります。冬の入口に、すてきな曲を揃えました。新美さんはガットギターに加えて、自ら超改造したアンプとともにエレキギターも弾いてくれます。今年最後の演奏になります。平日の昼間ですがご都合よろしければどうぞいらしてくださいませ。

 

2018-12-02 | Posted in ... Blog ...Comments Closed 

 

美に灼かれて、暑さを凌ぐ

この暑さ、夏らしい風情もどこへやら。風鈴、団扇、盆踊り。朝顔、打ち水、線香花火。夏という季節を楽しむ余裕もなく、ただただエアコンの部屋に逃げ込むしかない・・・何も大したことをしていないのに、燃え尽き症候群かのよう。今年の暑さは記録的・世界的。ホッキョクグマも居場所がますますなくなってしまうでしょう。

太陽のような熱気に押されて、ページをめくっていて身も心もアツくなった本。

堀越千秋さんの「美を見て死ね」。ドキッとするタイトル。ですが、美に触れることの豊かさをおおらかに指南してくださるエッセイ集なのです。

この本を最初に手にとりぱっ、と開いたページから「尿(いばり)する裸僧」という絵が目に飛び込んできました。なんという絵。エネルギー体のような絵。くらくらしました。「いばり」という読み方も知りませんでした。古今東西さまざまの造形や色彩への、堀越さんの大いなる讃歌。アートの見方についてこんなに面白く、勉強になってしまう本は知りません。

そして痛烈な安倍政治批判。そうです、黙っていてはいけないんだ。私達は言葉を持っている。そして美しいものを感じとれる、誰のものでもない自分だけのココロも。なんとなく巻かれるままに生きていたら、気づいたら平和を失ってしまうかもしれない。それは歴史が証明してくれている。お金によっても私達は惑わされてしまう、踊らされてしまう。千秋さんからのこの国を憂えての精一杯の警告。美は時として怒りのように燃え上がる。

いつぞやの夏の集まりで、歌う顔を素描していただいた宝物の記憶とともに。

 

2018-08-03 | Posted in ... Blog ...Comments Closed