■トーク ロシアの旅あれこれ


第4回 「明日は絶対に成功させたい」


 新美:モスクワで、PAの本藤さんが持ち込んだギターにくっつけるマイクを、誰かが踏んじゃったか何かで金属がちぎれて壊れちゃったんだよ。

・・・ ほぉ。

 新美:それをね、エカテリンブルグと事前に連絡をとって、ハンダゴテを用意しといてくれって言ってたらしくって。

ときわ:え~、そうだったの?

 新美:うん。で、そのハンダゴテを空港ですぐに借りて、ライブに向けて直しておいてくれたの。

ときわ:え~!そうだったんだ!

 新美:それであの日、そのマイクが使えたおかげでこの録音ができたんだよ。

ときわ:え~!それは知らなかった。

・・・ へ~~!

 新美:別のマイクもあったんだけど、ラクしないで、常にそういうベストな事をやってくださる。

ときわ:すごい。

 新美:だから、本藤さんのそういう気持ちとかも、オレはすごく感じていて。

・・・ うん。

 新美:サウンドチェックの時にさ、ロシアのちょっと若いPAの人に割り込んで、色んな機材の話とかを片言でやってた。iPhoneのロシア語翻訳アプリを入れて持ってきてて、それで何かやりとりしてた。

・・・ へ~~。

 新美:で、いざサウンドチェック始まったらさ、PAのとこにワイヤレスマイクがあって、「わんつー、わんつー」って、日本式のあの。

ときわ:(笑)

 新美:日本のPA屋さんがやるヤツをやってくれたの、「ちぇっく、ちぃ~えっく」って。あれをロシアで聞いたもんだから、オレすごくやり易くなってさ(笑)。

ときわ:安心したよね。

・・・ そうなんだ(笑)。

 新美:変に気取らないとこがね。

ときわ:そうそうそう。

 新美:職人魂っていうかね。なんかすごい勇気づけられたんだよね。

ときわ:うんうん。そうだね。

・・・ ところでセットリストとかは二人で決めたの?

ときわ:一応考えてて、日本で考えてた通りにモスクワでやって。

・・・ うんうん。

ときわ:で、エカテリンブルグでやる前の晩に、この感謝の気持ちをお返しするにはもうちょっとやり方を考えようと思って。私はこの曲順じゃなきゃ絶対だめだって言ってね。

 新美:そう。オレが半分考えてたリストもあったんだけど。急に前の日にね。

・・・ うんうん。

 新美:エカテリンブルグのライブの前の日に「私が考える」って急に。

・・・ うんうん。

 新美:え!って思ったけど、今までそういう事なかったから。気迫がすごくて。

・・・ (笑)

ときわ:なんか明日は絶対に成功させたいと思って。

・・・ うん。

 新美:すごかったよね。

ときわ:これで行くしかないと思った部分があって。

・・・ で、その内容はある程度事前に考えていた感じで、順番とか見せ方を変えたって事?

ときわ:うん。見せ方を変えた。あと、やらない予定だった曲とかもちょっと持ってきたりした。

・・・ そうなんだ。

・・・ であのエカテリンブルグのライブ全体で何分ぐらい?あの音源でほぼ全てぐらい?

 新美:曲だけで90分かな。MC入れて2時間ぐらいあったと思う。

ときわ:そんなにやってたかな~?

 新美:うん。

・・・ へ~~~。

ときわ:通訳が途中で入ったりしてるしね。

・・・ そっかそっか。

 新美:だから使わなかった曲もいっぱいあるよ。

・・・ 頭から最後までず~っと温かいというか、ウェルカムな雰囲気に感じたんだけどあれは、途中から温まって来たとかじゃなく最初から?

ときわ:最初から割と、ウェルカムって感じだった気がするかな。

 新美:うん。

ときわ:何か一曲目を歌い終わった後に男の子が舞台に上がって来て、花をいきなりくれたの。

・・・ へ~~!

ときわ:それに対して、お客さん達が「わぁ~!!」ってなってて。

・・・ うん。

ときわ:ここでいきなり花!?って(笑)。

・・・ (笑)うんうん。

ときわ:わたしも「ありがとうございます!」って。そしたら、それがほんの始まりで。2曲目、3曲目と曲が終わるごとにひとり、またひとり、って花を持って来てくれたの。

・・・ え~~!?

ときわ:一曲やるたびに持って来てくれるから、びっくりして。

・・・ すごいね、それ。

ときわ:一応、飲み水を置いておく為のテーブルがたまたまあったから、そこに花をもらうたびに置いて。

・・・ で、次の曲やって、またもらって、置いて?

ときわ:そうそう。

 新美:オレにもくれたんだよ。

ときわ:そうそうそう。新美くんにもくれた。

 新美:段取りしてあったんだよね、みんなが向こうで。

・・・ なるほどね。でも一曲ごとって、嬉しいけどやり難いよね。

ときわ:途中で流れがぶつ切りになるからね。でもその都度みんなが、わぁ~!ってなってたから、やり難さ以上に、嬉しかった。感激を通り越していたような。

・・・ うんうん。

ときわ:最後の方にはもう、抱えきれないぐらい、一生分の花束をもらっちゃったんじゃないか、ぐらいだった。

・・・ 日本だと考えられないねそれは。

 新美:うん。すごい素敵だな~と思ったよ。

ときわ:ね~、びっくりした、あの時は。

・・・ すごいね。

 新美:日本文化センターはマリーナさんを中心に、向こうで日本文化の紹介を20年も続けてきたんだよね。20年前っていったら1993年だから、ソビエトが崩壊した直後だよね。混乱期。その中で活動するパワーと信念みたいなものはすごいよね。

ときわ:そうだね。

・・・ それは、日本が好き!みたいなとこから始まってるの?例えばお茶をやってて日本文化に興味が湧いてとか。

ときわ:確かもともと、お母さんが日本の文化をかじってたという話を聞いた気がする。お母さんの影響があったはず。確か。

・・・ ふ~ん。じゃ、もともと日本に対してプラスのイメージがあって、そっから何かの影響でって感じかな?

 新美:で、いざ日本に一回来たら、あまりにソビエトと違ってて、日本はキラキラ光り輝いてた、みたいな事を言われてたよ。

・・・ すばらしとこに見えたんだ。

 新美:だって、当時のロシアはね、全部がすごい状況だったから。

(聞き手:永尾ともあき)

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アルバムについて

in Ekaterinburg

ロシア・エカテリンブルグでのライブ録音盤です。
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