夏の祭り

「四万六千日(しまんろくせんにち)」というなんとも有り難い二日間があります。毎年それはやって来ます。その日に観音様にお参りすると、46,000日お参りした分の功徳があるとされています。得したような、日頃の怠け心を見透かされているような気持ちで、ちゃっかりとお参りさせてもらうのです。鈴なりにつらなる朱い実が功徳の数を表しているのか、「ほおずき市」として催されます。浅草寺のほおずき市がことに有名ですが、駒込大観音・光源寺の千成りほおずき市も、手作りのお祭りの雰囲気が満ち満ちていました。去年の秋に松本に移転したヤマベボッサ(旧谷中ボッサ)をまずのお目当てに、魅力ある屋台が連なり飲み食いしたり買い物をしたり。塗香(ずこう)という、この時初めて知った香りのブースがあり、一袋、調合してもらいました。何種類もの天然の原料を混ぜ合わせます。やさしく、ほっとする、どこか懐かしい香り。手首にさらさらとこすって、自分だけが楽しむ香り。香水のように、周りにはほとんど香らないのだそうです。主張しない、控えめなところが面白いです。

暑さでうだる夜、一枚のレコードをふと棚から取り出しました。マヘリア・ジャクソンの古いレコードです。中村とうようさんのライナーもじいんと来るのです。美空ひばりさんが、仕事から疲れて帰ってくると、マヘリアのレコードをかけ、「大地と母の乳房のにおいのする歌に身を浸す」のだそうです。ひばりさんをして、「歌のふるさとへ帰る」と言わしめるマヘリア・ジャクソンの歌。とうようさんは、誰もがしみじみといいなあと思う歌をうたう彼女の人間的な偉大さはどこから来るかというと、ひとえに、彼女の信仰心の厚さからではないか、と書いておられました。敬虔なクリスチャンの彼女は、教会以外の会場でもコンサートをするけれど、お酒を出す場所では決して歌わなかったそうです。日々の信仰は、四万六千より勝る、のでしょう。とても及ぶべくもないけれど、夏のお祭りに、日々を生かしてくれる大きな存在にふと気がつくのです。

気の向くままに書きました。乱文失礼しました。

 


2017-07-21 | Posted in ... Blog ...Comments Closed