■本日のお客さま 第3回 石山和男 サンビスタ

 


Kazuo Ishiyama

【石山和男】(いしやま・かずお)

1957年、横浜出身&在住。放浪作家&歌手。
レコード会社のディレクター時代にブラジル音楽と出会い、ジャヴァン、シモーネ、ロベルト・カルロスなどを発売した後、退社。バイクでブラジル全土を1年間放浪。

帰国後は、旅・アウトドア・バイク雑誌などで執筆活動。
横浜のサンバチーム「エスコーラ・ヂ・サンバ・サウーヂ」代表。サンバ歌手として、1930年代のマランドロのサンバを演奏する。

AGUA NA BOCA(アグア・ナ・ボカ)、MPBからオリジナルサンバ歌謡を歌うITA E KAZU−XI(イタイカズーシー)でライヴ活動を続けている。

【著書】:ブラジル・オン・ザ・ロード(ビレッジセンター)、横濱フレンチ(霧笛楼)ほか
【DVD】:OUTRIDER’S DVD 日本の名道ビーナスライン


 

ときわ

今日は日本のサンビスタのカズさんにお越しいただいております(笑)。

石山

間違いなく、サンビスタです(笑)。

ときわ

ブラジルには、低音が魅力の女性歌手が多くいますよね。

シモーネ、マリア・ベターニア……。

石山 マイーザとかね。
ときわ 最近だと、イヴェッチ・サンガーロもいますね。
石山 うん。
ときわ

その中でも特に、私はシモーネが大好きなんです。

いまの日本ではあまり知られていないんですが、かつては来日したこともあるし、日本盤のアルバムも出しているんですよね。

石山 うんうん。
ときわ

今日は、その当時にレコード会社でシモーネの担当ディレクターだったカズさんに、来日当時のお話をぜひ伺いたいなと思って。

石山 思い出しましょう(笑)。
ときわ

カズさんがシモーネを最初に知ったきっかけは、やはりレコード会社にいらしたときなんですか。

石山

そう。EPIC/SONYっていうレコード会社にいて。そこは、CBS/SONYの兄弟会社としてスタートした会社だったの。

僕は、そこに新卒一期で入社したんですね。

ときわ はい。
石山

だけど、まだ会社としてどのアーティストも売れていない時期で。

制作担当が、毎朝朝礼で売り上げを発表するんだけれど、「誰々が3枚」とかね。

ときわ ほ〜う。
石山

邦楽も全然売れてない頃だったし、「こんな会社に入って大丈夫なのか?」と思うような状態だったんです。

ときわ へぇ〜。
石山

もともとは、アメリカにEPICという、後にマイケル・ジャクソンが育っていくレーベルがあってね。

そこにはもうひとつ、CBSインターナショナルというレーベルもあったんです。


ときわ はい。
石山 で、EPICが契約していたアーティストに日本で売れている人が少なかったこともあり、日本の親会社のCBSソニーからCBSインターナショナルというレーベルをもらったんですね。

その頃は、いま以上にヒットチャート重視の時代だったんだけど、売れているアーティストなんて全然いなかったの。
ときわ ええ。
石山

僕は入社して2年目にディレクターになったんだけれども、そのときに、そのときに、「CBSインターナショナルのアーティストの面倒も担当してくれ」ということになった。

それからは、毎月とんでもない量のレコードが送られてくるんです。イスラエルとか、ケニア、コロンビア、トリニダード・トバゴとかから。

それを1枚1枚聞いていく。もう、山のように積み上げられるくらい。

ときわ ええ〜(笑)。
石山

会社に小さなブースがあって、そこで寝る間も惜しみながら聴いて。

そんなとき、このシモーネのジャケットがひっかかって。

ときわ

これがあったんですね。

石山

やっぱりジャケットからピンとくるっていうの、あるじゃない。裸っていうのもあるんだけど、それだけじゃなくて何か惹かれるものがあるんですね。

ときわ ええ。
石山

その頃、僕はまだブラジルのミュージシャンをあまり聞いてなくて。

まず、この低い声が女だっていうことが信じられなかったんですよ。「男じゃないの?」って。だけど、よくよく聴いていると、女性で、しかもすごくいいメロディで。

ときわ

(強くうなずく)

石山

当時、僕はスペインのフリオ・イグレシアスという歌手のデビューを手がけたんですね。

それが奇しくも当たって、EPIC/SONYの洋楽部門にもヒットアーティストが生まれてくるわけです。

ときわ ええ。
石山

そのときのコンセプトが、「大人」だった。大人のマーケットを開発できるんじゃないかと思ったんです。

当時のヒットチャートを賑わしていたのは、子どものためのものばかりで、そこに大人が聴いている音楽は入っていなかった。

コンピュータ・ミュージックとかディスコの時代だったからね。


ときわ そうですよね。
石山

けれども、僕らの会社でフリオ・イグレシアスを手がけて大人のマーケットに投げ込んでみたら、ものすごく当たった。

ときわ うんうん。
石山

それで余力ができたというか、大人のマーケットを開発したいという狙いもあって、「大人向け」のアーティストを探していたんです。

ときわ ふむふむ。
石山 そのなかに、ロベルト・カルロスなんかもいて、1枚出したんだけど。
ときわ そうなんですか。
石山 そんなときにシモーネを見つけて、音楽情報誌『Latina』(※当時の名称は『中南米音楽』)」の編集者に聞いてみたら、「ブラジルでは、いま最高に人気があるよ」という話で。

他のレコードやビデオ、資料を送ってもらって確認したら、まあこれはすごい!と。
ときわ

どういうところに、すごさを感じました?

石山

彼女の持っている歌の力、声ですよね。

不器用そうでいて、繊細で、なめらか。

ときわ ライブ映像も見たんですか?
石山

ええ。数十万人規模のライブ映像を見て、フリオ・イグレシアスと同じようなカリスマを感じたんです。

ときわ ふむふむ。
石山

ミルトン・ナシメントだとか、イヴァン・リンスのようなブラジルの偉大なアーティストすら全然知らない当時の僕にも感じられた。

(つづく)