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小さくても地球規模の上映会

連休期間中、二つの自主上映会に足を運びました。ひとつは、岡村淳監督の自主制作ドキュメンタリー。去年岡村監督とヤマベボッサでご一緒して以来、来日される期間にはどこかに伺うようにしています。「リオ フクシマ2」に続いて今回観ることができたのは「郷愁は夢の中で」。私も学生時代に渡伯した時に日系人の方々にお世話になったことがあり、岡村監督の描かれる移民社会の光と影が、とても興味深いのです。この155分の作品の主人公は天涯孤独の道を歩み、自作の「浦島太郎」を誰に語るともなく紡いでいた西さんという老人です。西さんのピュアなつぶらな瞳が印象的。ブラジルの奥地で、人情あふれる近隣の人たちに見守られながら、晩年を過ごしました。西さんは「無縁仏」となられたけれども、現代の日本で起こる「孤独死」を思うと、人同士がこんなに近くにいるのに、心の距離がありすぎるのは本当に淋しいことです。それは西さんが、戦後、故郷の日本に戻って目の当たりにした、景気が良くなって人が変わった、利己主義になった、と語っていたことがひとつの答えなのかもしれません。

浦島太郎とは西さん自身のことであって、世の中の変遷、時代の流れに取り残された者だけが見ることのできる景色なのだろうと思います。それは絶望のようなものなのかもしれませんが、物語として私たちに語り伝えてくれることこそ希望に変わるし、それをブラジルの大地に埋もれさせず、ブラジルと日本を往復しながら記録に収め、さらに時を経て東京の街の一角で私たちの心に届けてくださった岡村監督と主催者の方に、改めて拍手を送りたいと思います。

上映後、監督とお話させてもらった時に、すぐにお気づきにならなくて「公安が送りこんだハニートラップかと思いました!」とびっくりされたのには大笑いでした。岡村節もいつもさすがです。

さてもうひとつ観たのは「コスタリカの奇跡」という映画です。中米コスタリカはどのようにして軍隊を持たなくなったのか?その歴史や現状を私たちは知る由もなかったのを、アメリカ人の監督によって歴代大統領のインタビューなどで紐解かれた作品です。昔とある方から「人間関係でいちばん幸せなことは対等であること」と教わったことがあります。国家間でも同じことが言えると思います。コスタリカは勇気と決断力でそれを目指そうとしました。では、私たちの国は?軍事予算を増やすばかりで医療も教育費も削る国の未来は?これもほんとうにいい映画でした。どちらも小さな自主上映会。小さくてもテーマは地球規模、人類の未来につながっていくのだなあ。

 

2018-05-08 | Posted in ... Blog ...Comments Closed 

 

グレコ そして春の風景

先週の大塚 グレコでのライブは、去年から声をかけて弾いてもらっているピアノの中島明子さん、そして私がDois Mapasの頃から、存在感が際立っていたフレットレスベースの織原良次くんと、三人でおおくりしました。織原くんとはライブで共演するのは初めて。明子さんも、織原くんも、「音」がとてもジェントルで、且つ、私のある意味ベタかもしれない選曲に新風を吹き込んでくれるのです。「すごいなぁ」と思う人に出会えるのはしあわせなことです。この日はいつも聴いて下さる方、10年以上ぶり?にライブに来てくださった方も。しぶとく歌い続けるといいことがあります。ありがとう…。

翌日はカフェ・ムリウイにてシンガーソングライター久米貴さん率いるKOOMOONのレコ発ライブへ。最初に演奏していたボーカルとギターのデュオ、MAKIMもいいなあ、サムゲタンの歌なんてびっくり…と思って聴いていたら、大学の後輩とのことでさらにびっくり。KOOMOONのバランス感覚が好き。ひろたえみさんの声が好き。ホットラムミルクで温まりながら心地よくなりました。KOOMOONを聴くと生きてる心地がしてきます。手作りのCDジャケットもずっと大事にしたくなる。

その翌日は栃木は那須の、ずっと行ってみたかった非電化工房併設の非電化カフェへ。高原にある沼のほとりの、気持ちのいい場所。犬が、ヤギが、つくしが、ムスカリが、微笑んでいる。非電化の家、非電化の浄水器、非電化の冷蔵庫…、工夫と知恵で、ニンゲンという生きものがもっとのびのびと心地よく暮らすためのヒントに出会えるのです。ツリーハウスを覗きに行ったら、その脇でお弟子さんがこの日旅立つために、軽トラに自分の住まいを組み立てるのがちょうど佳境という所でした。一年間、その車で全国を旅するそうです。またどこかで会えるかしら…。

そして、最終目的地の那珂川町は小鮒農園へ。一泊させてもらって、山菜を摘んだり、周辺を散策したり、黒磯や那須へ連れていってもらいました。江戸時代からあるような風情の温泉浴場「鹿の湯」の効能たっぷりのお湯で身も心も軽くなる。前の晩も、町内の公衆温泉で日没を眺めながらの露天風呂で最高の時間でした。夕焼けが美しい里山は、時間もゆっくり、豊かに流れるような気がします。小鮒農園のお野菜を使っている近くのイタリアン「TOTO」の美味しいランチと旬のイチゴのロールケーキで、春にいる喜びがまた増しました。

 

2018-04-13 | Posted in ... Blog ...Comments Closed 

 

オマーラのさくらさくら

朝の公園での花見体操はこの時期だけのゼイタク。
先週からずっとアタマの中に流れているのは、オマーラ・ポルトゥオンドがコンサートでキューバの名曲たちの合間に歌った「さくらさくら」。

すーっと話すようにアカペラで歌い始めて、自分で軽く手拍子をしながら、あの旋律と歌詞。グッと来ちゃったな…。

この際、年齢を云々するのは野暮よね。つややかでちょっと渋みのある、深いルビー色のような歌声。どっしりと根を張る大木から枝がすーっと天空に向かっていくように、声は優雅にどこまでも伸びていく。歌を歌う、というより、彼女が居るその場の何もかもすべてを「飲み込んで」いる感じ。観ているこちらはその心地よい音楽の渦に身を委ねるがまま。こんなに圧倒的なのに、全身ピンク色のドレスがよく似合う、かわいらしい女性のオマーラ。

一曲だけゲストで呼ばれたピアノの奥山勝さんがベサメ・ムーチョを弾き始めたとき。オマーラはそれまでとは違った歌い方をしていました。どんな器が来てもそこにきれいに収まる水のように、調和するのだなあと思ったのです。バックの音を尊重するしなやかさ。どこの国とか、どんなジャンルかではなくて、人間としてどれだけすべてを愛せるか、そこから来る自由さを感じました。オマーラは今年の桜をきっと愛でていったことでしょう…。

 

2018-03-26 | Posted in ... Blog ...Comments Closed