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美に灼かれて、暑さを凌ぐ

この暑さ、夏らしい風情もどこへやら。風鈴、団扇、盆踊り。朝顔、打ち水、線香花火。夏という季節を楽しむ余裕もなく、ただただエアコンの部屋に逃げ込むしかない・・・何も大したことをしていないのに、燃え尽き症候群かのよう。今年の暑さは記録的・世界的。ホッキョクグマも居場所がますますなくなってしまうでしょう。

太陽のような熱気に押されて、ページをめくっていて身も心もアツくなった本。

堀越千秋さんの「美を見て死ね」。ドキッとするタイトル。ですが、美に触れることの豊かさをおおらかに指南してくださるエッセイ集なのです。

この本を最初に手にとりぱっ、と開いたページから「尿(いばり)する裸僧」という絵が目に飛び込んできました。なんという絵。エネルギー体のような絵。くらくらしました。「いばり」という読み方も知りませんでした。古今東西さまざまの造形や色彩への、堀越さんの大いなる讃歌。アートの見方についてこんなに面白く、勉強になってしまう本は知りません。

そして痛烈な安倍政治批判。そうです、黙っていてはいけないんだ。私達は言葉を持っている。そして美しいものを感じとれる、誰のものでもない自分だけのココロも。なんとなく巻かれるままに生きていたら、気づいたら平和を失ってしまうかもしれない。それは歴史が証明してくれている。お金によっても私達は惑わされてしまう、踊らされてしまう。千秋さんからのこの国を憂えての精一杯の警告。美は時として怒りのように燃え上がる。

いつぞやの夏の集まりで、歌う顔を素描していただいた宝物の記憶とともに。

 

2018-08-03 | Posted in ... Blog ...Comments Closed 

 

青い息吹と歌 in みちのく

6月はじめに北東北は八戸~下北半島・薬研温泉~盛岡へ歌いにいきました。新緑の美しかったこと。
演奏会へ来てくださった方、お世話になった方、協力してくださった方への感謝の気持ちとともに、旅の間つけていた手帳から抜粋してここに記します。少々長いですがあしからず、です。

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5/31(木)
前日まで演奏の内容を新美さんと練りに練る。朝9時出発、まずは郡山へ。
3人旅となるプレイタイムカフェ丹治マスターと一緒に、いざ北上。
東北道は所々、豪雨。白河のあたりも前が見えないほどの雨だった。
最初の宿泊地・岩手の安比高原へ。あわやカーナビなしの旅になるところ、やはりあってよかった。文明の利器の恩恵と丹治さんの機転により夕食処にもたどり着いてほっとする。とにかくお水が美味しい。

6/1(金)
昨晩の雨でしっとりと濡れた高原の朝の清々しさ。
天気は上々。前をトロトロと走っていた軽自動車の後をついてみた先は岩手県二戸村の産直所。地元の人しか来ないような小さなお店。はじめて見た滋味なる「きゃばもち」「豆もち」。里山でこういう素朴な味に出会えるのがしあわせ。

青森県に入り「キリストの墓」がある新郷村に立ち寄る。イエス・キリストについて驚きの史実?ロマン?がそこにあった。2日後に「キリスト祭」があるとのこと。「ナニャドヤラ〜」の不思議なお囃子。学校では習わない歴史の裏側に思いを馳せる。

午後、八戸に到着。アンナさん、ジョーさんとはお久しぶり。いろいろな事業を手掛けられているお二人。今回私達が「ジョアン」でのこけら落とし公演とのこと。バンドリンの寺前さんとも再会。音合わせも心地よく。八戸でこうして3人で演奏しているのが何とも不思議。丹治さんのコーヒーを淹れる背景が夜のバーそのもので新鮮。お客さんから丹治さんに「100%真面目ですよね??」と興味津々のまなざし。ライブは寺前さんに参加してもらえたのがツアー一日目の大きな安心感だった。アンコールではアンナさんとジョーさんともセッション。終了後、お客さんから細やかな感想をいただき心強いかぎりだった。

6/2(土)
朝、いよいよ下北半島へ。まずは八戸の方に情報をもらった横浜町の道の駅を目指す。ひたすら松林と草原の一本道。所々海が見える。六ケ所村に差し掛かかり、風力発電の風車の数に驚く。そして原燃センター。過疎地にこそ原発がやってくる、雇用が生まれるから…と皆で言いながらものものしい建物を眺める。横浜町で休憩、さらに北上、むつ市へ。大畑町の大安寺に到着。副住職の長岡くんと再会。音響機材を借りていざ薬研温泉へ。イベントスペースの薬研カフェkadarでのライブ。お客さんとの深いやりとりをしながら、結局休憩は挟まず、2時間弱通して聴いていただく。音に集中した濃い時間だった。

6/3(日)

薬研の森で「光と風のマルシェ」。お天気はこの上ない。樹冠からそそぐ木漏れ日の美しさ。木々の間からヒグラシのような声が聞こえてくる。春蝉というそうだ。東北の先端というとひっそりとしているイメージだったけれど、植物や虫たちの生命力、スケールの大きさに圧倒される。まさに「青い息吹」。ここまで来られてよかった、と思う。野外で演奏するのも久しぶり。歌いながら、森のなかの自然のこだまを感じる。CDもいろいろな方に手にとっていただいた。小学生の女の子に「いい声!」と言ってもらえて嬉しい。下北産の食材のお弁当、青森ヒバの廃材で作られた籠、裂織のバッグ、手打ちそばなど地元の出店の方々も素敵だった。

マルシェの後、夕刻迫る中、30分ほど山道を南下し恐山へ。近づくごとに硫黄のにおいが強くなる。”三途の川”を渡り、恐山参拝。境内にある素朴な湯屋で汗を流す。岩場を歩いた先には、静寂な宇曽利湖の浜。湖に向かって名前を呼ぶと、あちら側に聞こえるそうなのでみんなで「芳江ちゃーん!」と叫ぶ。夕暮れの湖と山をしばし眺める。周囲の森から、虫やカエルの声がしきりと聞こえてくる。まるで生命の讃歌のような音。今回は、巡礼の旅でもあったのかもしれない、と思う。

大安寺に戻り長岡くんにお礼と別れを告げ、八戸に向かう。とっぷりと暮れた横浜町の道の駅でマルシェでいただいたお弁当に舌鼓。夜はふたたび八戸泊。

6/4(月)
ライブ最終日・盛岡へと出発。九戸村の道の駅で腹ごしらえ。「ひっつみ」というすいとん汁が美味。やはり郷土料理の「かっけ」を食べていた丹治さんに、厨房から料理人さんが飛んできて食べ方を直してくれる。丹治さん曰く、岩手の人は接客やおもてなしが自然で素晴らしいとのこと。午後cartaに到着。震災前はプレイタイムの芳江さんを中心に味噌作りのお仲間でもあった真二さん、奈穂美さん。ほっとする佇まい。cartaさんへはゆっくり本と一緒に来たいなと思う。

ちょうど窓から見える空の色が刻々と変わるころの最初のステージ。そして休憩中、外にいると一匹の小さなカエルがお店の扉に向かって、入りたそうにしていた。奈穂美さんと「芳江さんかも?」と笑う。最後の曲でスピーカーからビビッと音が。何かをキャッチしていたのかもしれない。打ち上げでも皆でその話をする。アンコールは芳江さんを想いながら歌う。cartaでは思わぬ方、思わぬつながりがあり、人のご縁の不思議さありがたさをひしひしと感じる。遅くまで打ち上げ、私は酔いで半分寝ぼけながらの一本締めの音頭。あたたかい夜だった。

6/5(火)
午前、新美さんの元ギター生徒さんと光原社でお茶。そしてcartaで丹治さん、郡山から来て下さった優子さんと合流。真二さんたちに大手を振って見送られながら盛岡を経つ。途中仙台に立ち寄り、郡山へ。時にはホッとひといき、時には活力の源のコーヒーを淹れてもらった丹治さんの宇宙的豆知識もこれでしばらく聞けない…と思うとさびしくなる。優子さん、丹治さんと別れ、帰途につく。出会った人々、風景を巡らせ、出来事を噛みしめる。何より私が息吹を吹き込んでもらった。これを糧に人生の旅をつづけられる…と思う。

 

 

2018-06-13 | Posted in ... Blog ...Comments Closed 

 

小さくても地球規模の上映会

連休期間中、二つの自主上映会に足を運びました。ひとつは、岡村淳監督の自主制作ドキュメンタリー。去年岡村監督とヤマベボッサでご一緒して以来、来日される期間にはどこかに伺うようにしています。「リオ フクシマ2」に続いて今回観ることができたのは「郷愁は夢の中で」。私も学生時代に渡伯した時に日系人の方々にお世話になったことがあり、岡村監督の描かれる移民社会の光と影が、とても興味深いのです。この155分の作品の主人公は天涯孤独の道を歩み、自作の「浦島太郎」を誰に語るともなく紡いでいた西さんという老人です。西さんのピュアなつぶらな瞳が印象的。ブラジルの奥地で、人情あふれる近隣の人たちに見守られながら、晩年を過ごしました。西さんは「無縁仏」となられたけれども、現代の日本で起こる「孤独死」を思うと、人同士がこんなに近くにいるのに、心の距離がありすぎるのは本当に淋しいことです。それは西さんが、戦後、故郷の日本に戻って目の当たりにした、景気が良くなって人が変わった、利己主義になった、と語っていたことがひとつの答えなのかもしれません。

浦島太郎とは西さん自身のことであって、世の中の変遷、時代の流れに取り残された者だけが見ることのできる景色なのだろうと思います。それは絶望のようなものなのかもしれませんが、物語として私たちに語り伝えてくれることこそ希望に変わるし、それをブラジルの大地に埋もれさせず、ブラジルと日本を往復しながら記録に収め、さらに時を経て東京の街の一角で私たちの心に届けてくださった岡村監督と主催者の方に、改めて拍手を送りたいと思います。

上映後、監督とお話させてもらった時に、すぐにお気づきにならなくて「公安が送りこんだハニートラップかと思いました!」とびっくりされたのには大笑いでした。岡村節もいつもさすがです。

さてもうひとつ観たのは「コスタリカの奇跡」という映画です。中米コスタリカはどのようにして軍隊を持たなくなったのか?その歴史や現状を私たちは知る由もなかったのを、アメリカ人の監督によって歴代大統領のインタビューなどで紐解かれた作品です。昔とある方から「人間関係でいちばん幸せなことは対等であること」と教わったことがあります。国家間でも同じことが言えると思います。コスタリカは勇気と決断力でそれを目指そうとしました。では、私たちの国は?軍事予算を増やすばかりで医療も教育費も削る国の未来は?これもほんとうにいい映画でした。どちらも小さな自主上映会。小さくてもテーマは地球規模、人類の未来につながっていくのだなあ。

 

2018-05-08 | Posted in ... Blog ...Comments Closed