美に灼かれて、暑さを凌ぐ

この暑さ、夏らしい風情もどこへやら。風鈴、団扇、盆踊り。朝顔、打ち水、線香花火。夏という季節を楽しむ余裕もなく、ただただエアコンの部屋に逃げ込むしかない・・・何も大したことをしていないのに、燃え尽き症候群かのよう。今年の暑さは記録的・世界的。ホッキョクグマも居場所がますますなくなってしまうでしょう。

太陽のような熱気に押されて、ページをめくっていて身も心もアツくなった本。

堀越千秋さんの「美を見て死ね」。ドキッとするタイトル。ですが、美に触れることの豊かさをおおらかに指南してくださるエッセイ集なのです。

この本を最初に手にとりぱっ、と開いたページから「尿(いばり)する裸僧」という絵が目に飛び込んできました。なんという絵。エネルギー体のような絵。くらくらしました。「いばり」という読み方も知りませんでした。古今東西さまざまの造形や色彩への、堀越さんの大いなる讃歌。アートの見方についてこんなに面白く、勉強になってしまう本は知りません。

そして痛烈な安倍政治批判。そうです、黙っていてはいけないんだ。私達は言葉を持っている。そして美しいものを感じとれる、誰のものでもない自分だけのココロも。なんとなく巻かれるままに生きていたら、気づいたら平和を失ってしまうかもしれない。それは歴史が証明してくれている。お金によっても私達は惑わされてしまう、踊らされてしまう。千秋さんからのこの国を憂えての精一杯の警告。美は時として怒りのように燃え上がる。

いつぞやの夏の集まりで、歌う顔を素描していただいた宝物の記憶とともに。

 


2018-08-03 | Posted in ... Blog ...Comments Closed