戦争体験者の話を聞く会
8月も半ばをすぎ、夕方になると暑さもさすがにやわらいでくれる
ようになって、ほっとします。うちのわりと近所に「ピースあいち」
という戦争と平和の資料館があって、今月は2週にわたって
戦争体験者のお話を聞く会があるというのでそのうちの2回、
行くことができました。最初に聞いたお話の主は
シベリア抑留からの帰還兵だった河村さんという方、91歳。
お年からは考えられないほどのエネルギッシュなお声と語り口で
会場いっぱいの子供から大人まで、じっと聞き入っていました。
シベリア抑留の話は、辺見じゅんさんの「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」
や赤塚不二夫さんの自伝「これでいいのだ」(どちらも名著!!)で
読んだことはあったものの、実際に行かれた方のお話を直接聞けるのは
めったにない貴重な機会だと思いました。
高さ30メートルもの松の木を片刃ののこぎりで切り倒す、
これを1日3本というノルマを課せられる。しかし雀の涙のような
食事で体力は衰えるばかり、11月になればマイナス20度。
飢えと極寒でとてもノルマは達成できず、次々と倒れていく仲間。
過酷な話を淡々と、しっかりと語られる河村さん。黒パン一切れも
奪い合うような経験をしたので、大食い競争などを見ると
腹が立つやら情けないやら…とおっしゃっていました。
食べ物だけは大事に。ただで今の平和があるわけじゃない、と。
300万人以上の犠牲のおかげでこの平和があるのを
忘れてはいけない、との言葉が静かにひびきました。
さらに河村さんから強く感じたのは、シベリアの地に今もなお眠る
戦友への思いでした。飢えや病気・事故で亡くなり、お墓とも
言えないような場所に埋められたまま、日本に戻って来られない
仲間たちの御霊に対して申し訳ない、早く帰してやりたい、と。
大戦を経験した方たちの心の傷は、70年を経ても癒えることなく
なお深く残っています。それを私も知らないままだったのだなあと、
思ったのです。